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一級建築士事務所   林建築設計工房


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観音坂の町家

〈第36回金沢都市美文化賞〉頂きました。

 

建物を持ち上げて、傾きを直し、

中も外もすっかり綺麗になりました。

あと半世紀がんばってもらいましょうか。

 

昔の風情をそのままに

お庭も階段を付けて出入りできるようになりました。紅葉がきれいです。

既存のコンクリート擁壁の外側に

新たな擁壁をコンクリートで造り、地盤を補強しました。

また、コンクリート基礎も新設し、壁も補強して耐震性も向上しました。

大正ロマンな額装は誂えて頂きました。

とっても素敵でしょ。

製作: 染めのアトリエ 藍楽布(あいらいふ)

2階の玄関はお持てなしに是非。  

和室に炉を切って、お茶室に

ここが2階の縁側でした。見晴らしの良い談話室に変身。お客さん呼べそうでしょ。

こちらお住いの玄関           

町家だと思っておなどることなかれ、外張り断熱のオール電化。おまけに照明はLED。

リビングダイニング、杉の引き戸なかなかいいでしょ。

庭が望めるコンパクトなキッチン。しっかり収納も充実。

ここは地下の物置でした。すっかり仕事場に変身。奥には物干場もあるのです。

夜景も楽しんでくださいよ。いい眺めでしょ。百万石の夜景?

実は私。4人兄弟の長男なのでした。

観音坂の町家

  文明は発展し続け、都市は姿を変え続ける。発展は街を変えてきた。その変化は、時にはゆっくりと、また時には急速に進んできたのであろう。人類は多くのものを発明し、技術革新と更なる改良により、これまでに存在しなかったものも創ってきた。その変化は、機能、性能、経済性などの理由から、さらに情緒的な趣向から、社会が求めた結果だったといえるであろう。変化は改善が動機として、行われたり、起こったりすることが、少なく無かったと考えられるが、改善ですら、あらゆる側面で改善である訳ではなく、その視点により評価に違いがあるであろう。現在ある街並みは、正しく社会の思潮や人々の行いの痕跡でもあるはずだ。都市には、いつの時代にもこれまで創ってきた建築や構造物が存在し、それが街並みを創っている。その中には時間が長く経過しているもの、比較的に短いものが混在していることも少なくないであろう。それを古いと感じたり、新しいと感じたりする。また、懐かしいと感じたり、未来の展望を感じたりもするであろう。いつの時代にも新旧の混在があり、それが対峙していたり、調和していたりした訳だ。対峙することは、時は羨望の思いを持って、未来を感じることでもあるかもしれないし、肯定的に受け止められる存在であることでもある。今から50年後の日本の風景は如何なるものになろうか。街は混在というより、混沌としている。多様であることや変化は価値のあることであるが、現状や未来を考えると対峙と調和を再認識する必要もあるのではないか。また変化の速度も重要な要素と考える。歴史のコンテクストはとても価値があると思う。コンテクストを感じられることは、他には代え難い文化を感じ、そこにある人との繋がりさえも保つことができるのではないか。そこには変化の速度が関係しているように思うのである。

 伝統という表現があるが、これは伝える価値があることを伝えていくことだと思う。「今はなき、伝統の技術」という表現があるとすれば、それは現在は存在しない技術で、伝承されていないものである。伝統は、伝承されてこそ、活用されることに価値があり、博物学的、歴史的な意味をもちろん否定することではないが、その時代を生き抜いていくことでその評価を高め、存続し、受け継がれていくのである。そこには社会的要求に応える必要あることもあるかもしれない。変化も受け入れることも必要になることもあろう。伝承の経緯で変化があったであろうし、変化したから生き残ったものもあろう。全く変化せず受け継がれることも、価値のあることであるが、変化して生き残ることも増して価値があると思う。受け継がれていくことが、正しく伝統であり、そこには必要な変化もあるのである。

 観音院の参道に寄り添うように建つこの町家は、大正9年(1920年)に建てられた。永きに渡り、風雪に晒され、老朽とは正しくこのことかと感じさせるほどの体裁ではあったが、大正時代の好景気を感じさせる艶のある趣や崖地に建つ様は独特の威風さえ感じるものでもあった。この町家を生き返らせることが、この度の使命であった。単なる修繕に留まらず、性能や機能を高め、魅力を加えることで価値を増し、代え難いものとして、この地に存続するのである。一言でいえば、伝統に現代の技術や価値を加えたのである。そこには人の繋がりがあり、街を慕う思いが引き継がれる。掛け替えのない大切なコンテクストがある。

 

 

 

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